一年間のイタリア留学で、初めの3ヵ月は日本人にもお馴染みの街「フィレンツェ」で、残りの9ヵ月は同じトスカーナ州にある「ピストイア」という田舎町で過ごしました。
ピストイアという町に来た目的は「服の仕立て」を学ぶ為で、その専門学校に通うためにフィレンツェからこの町に移り住みました。
専門学校と言っても、日本で言ったら「塾」みたいな規模の学校で、普通の住宅の一室を使って授業を行っていたので、最初その学校自体を探すのに相当苦労しました。
当然の事ながら授業は全てイタリア語で行われるので、僕は授業が終わってからも、家で専門用語などを辞書で調べて、その日の授業をノートにまとめる作業を行っていました。
  Map-Province-Toscana
(フィレンツェからピストイアへの引っ越しの日、イタリアでは定番のストライキが起き、電車がストップし、足止めを食らいました)

ピストイアでは中心部から少し離れた郊外に部屋を借りて一人暮らしをしていたので、自転車屋で中古のマウンテンバイクを買って、学校と自宅を行き来する生活を送っていました。
買った時点で既にタイヤはすり減り、ブレーキの利きも悪い「ダサ・ボロ自転車」だったのですが、9ヵ月も乗っていると次第に愛着が湧いてきて、帰国の準備をしている時に、「お金がかかるけれど日本に持って帰ろうかな」と思ったほどでした。
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        (住まいから学校まで少し距離があったので自転車屋で安い中古のMTBを買いました。
         アドベンチャーレースでは絶対に使えないオンボロ自転車ですがお世話になりました)


住まいは学校からもスーパーからも距離があって不便な面は多々ありましたが、部屋は広い寝室に広いリビング、キッチンもトイレもシャワールームも綺麗で、一人で住むには贅沢な位快適でした。
ただ、そこの大家さんが飼っている犬が巨大で、デカい犬が苦手な僕はその点だけが不快でした。
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       (イタリア版「犬に注意」の看板です。何となくお洒落な感じがして写真を撮ってしまいました)

毎年、大晦日と新年は家族と一緒に過ごすのが恒例となっていましたが、イタリアではクリスマスほど新年を重要視しないため、僕も大晦日の日、そばを食べる事もせず、いつも通りの時間に寝てしまいました。
ただ、何故かいつもよりも早い時間に目が覚めてしまって、折角なら初日の出を見ようと起きたところ、朝焼けに染まった美しい景色を見る事が出来、「今年は良いことがありそう」と勝手に思っていたことを思い出します。
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           (ピストイアで迎えた新年、初日の出。朝焼けに染まった空がとても綺麗でした)

僕に仕立てのノウハウを教えてくれた2人の先生、狭い教室で共に学んだ友達、いつも良くしてくれた大家さん、フィレンツェという大きな町では感じなかった「温かさ」がこの田舎町にはありました。
仕立ての専門学校に通う事はもう無いにしても、間違いなく必ずもう一度訪れたい町の一つです

2012年8月9日 倉田文裕