Parole 「今、言いたいこと」

Evoluzione 「カメラの進化」

僕は数年前まで写真を撮る事にそれほど興味がなく、撮られる事も苦手だったのでカメラというモノに全くと言っていいほど興味がありませんでした。
イーストウインドに所属し、海外のアドベンチャーレースに出場していた時も、メンバーに1台ずつ支給されたカメラで僕がレース中に撮った写真は数えるほどで、ただカメラを“持ち歩いていた”という状態でした。
撮られる事に関しては今も変わらず苦手ですが、撮る方はこのブログでも写真を使用するという事もあり、以前に比べると大分撮る機会そのものは増えたと思います。
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(今回の「越前岳」への登山で「オトナの趣味道具」として使わせていただいたCanonの「PowerShot S120」)

そんな無頓着な僕ですので、今までに手にしたカメラはたったの2台です。
1台は10年以上前に自分で購入したもの、もう1台は前出のレースの際に支給されたカメラです。
因みに僕は今時珍しいと思いますが、スマートフォンではなく、いわゆる“ガラケー”を使っています。
しかも、その“ガラケー”は大分前のモデルなので、内蔵されたカメラの機能も最新ではなく、僕は“今”のカメラの凄さというのを良く知りませんでした。
しかし、先日枻出版社さんの「オトナの趣味サークル」という活動に参加させていただき、最新のデジタルカメラで撮影をしながら山登りが出来るというまたとない機会をいただき、富士山南麓にある「愛鷹連峰」の最高峰「越前岳」に登って来たので、今回はその時の事を書きたいと思います。
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(富士見峠へと向かう登山道。気温は低めでしたが、天気は良く絶好の登山日和でした。「PowerShot S120」で撮影)

今回の登山で「オトナの趣味道具」として使わせていただいた“最新デジタルカメラ”はCanonの「PowerShot S120」というカメラで、“高速AFで動く被写体にも強い”、“最高12.1枚/秒のフル画素連写”、“F1.8レンズ搭載で世界最薄”、“撮影後も楽しいWi-Fi機能搭載”、“星空写真がもっと手軽に”という5つの魅力的な機能を搭載しています。
僕はこの登山にお借りしたカメラと一緒に数年前から使っているカメラも持っていき、同じ場所から同じように同じ風景を撮影し、その違いを比較しました。
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(数年前から使用しているカメラで富士見台から撮影した富士山。“最新カメラ”で撮影した写真がこの下の写真です)

「越前岳」に登ったのは昨年11月下旬の週末で、暖かくはありませんでしたが、青空も広がり山登りをするには最高の天気でした。
今回は車で登山口まで向かいましたが、公共交通機関でも「御殿場駅」か「三島駅」からバスに乗り、「愛鷹登山口」バス停で下車し、すぐ横にある林道を進めば、約10分ほどで登山口のある山神社に到着します。
ここにトイレや駐車スペースもありますので、マイカーの場合はここに車をとめて出発できます。
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(上の写真と同じ場所から最新カメラで撮影した富士山。明らかに空と山のコントラストがハッキリしていて綺麗です)

登山口には綺麗な鳥居があり、先ずはその鳥居をくぐって登山を開始します。
その後はしばらく針葉樹林の中の薄暗い道が続きますが、傾斜は非常に緩いので登り始めの身体を温めるにはもってこいの坂だと思います。
その林を抜けると緩い傾斜は終わります。
石がゴツゴツしたトレイルが始まり、しばらく光が差し込む温かい道が続くので一気に汗ばんできます。
ここから「富士見峠」の少し下にある「愛鷹山荘」までの間には鉄梯子を登る所やガレガレで落石が心配な場所はありますが、ゆっくりと慎重に進めば全く問題ないと思います。
因みに「愛鷹山荘」は個人所有の山小屋で、使用するには事前に所有者に連絡が必要だそうです。
また、トイレはありますが、水場は使用不可なので注意して下さい。
撮影モード比較
(「PowerShot S120」はトイカメラ風、オールドポスター、ノスタルジック等など多彩な撮影モードを選ぶ事が出来ます)

「愛鷹山荘」の横を抜け急坂を登ると「富士見峠」に到着します。
この「富士見峠」の分岐を左へ進むと「越前岳」、右に進むと「黒岳」ですが、今回の目的は「越前岳」に登る事だったので、ここを左の「越前岳」方面に進みました。
「富士見峠」から「富士見台」までの間には所々登山道がえぐれて“土のトンネル”みたいになってしまっている所がありますが、基本ゆったりとした傾斜のトレイルが続きます。
「富士見台」という場所はその名の通り富士山がキレイに見えるビューポイントで、この日も多くの人がここで富士山を見ながら休憩をしていました。
僕達もこの「富士見台」までの間にお借りしたカメラで色々と撮影をしながら登ってきましたが、やはり富士山が綺麗に見えるこの場所での撮影時間が最も長かった気がします。
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(富士見台から「越前岳」の山頂へと向かう途中「PowerShot S120」で撮影。近くのモノも非常にキレイに撮れました)

「富士見台」まで来れば「越前岳」の山頂はすぐそこです。
僕は「富士見台」から「越前岳」山頂までのこの区間が短いけれども一番キツイ区間だと思います。
ただ、山頂はすぐそこですし、左前方に目をやればギザギザな稜線が印象的な「鋸岳」が見えますので、急な傾斜も楽しくなってくると思います。
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(若干霞がかっていましたが「越前岳」の頂から日本の名勝「三保の松原」も見えました。「PowerShot S120」で撮影)

「越前岳」の山頂には老若男女、本当に沢山の人がいました。
足元は若干ぬかるんでいて、地面に腰掛けての休憩が出来ないくらいでしたが、天気は変わらず最高でした。
「越前岳」の山頂から見る富士山はその大部分が周辺の木々に阻まれてしまい、全容を仰ぎ見る事は出来ませんが、その代わりにユネスコの世界文化遺産に登録された日本の名勝「三保の松原」がバッチリ見えます。
絶景を眺めながら記念撮影をし、しばし休憩をした後、「三保の松原も良いけど、やっぱりキレイな富士山が見たいよね」という事になり、来た道を引き返して今度は富士山の絶好のビューポイントがある「黒岳」へと向かいました。
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(「黒岳」の山頂からは雄大な富士山の全容を望む事が出来ました。数年前から使用しているデジタルカメラで撮影)

再び「富士見峠」まで下り、今度はここの分岐を「黒岳」方面に進みます。
「富士見峠」と「黒岳」の途中にあるベンチ付きの展望広場まで、木段の登りが少しキツイですが、その坂を登りきってしまえば、後はそれほどきついアップダウンはありません。
この展望広場から見える富士山も凄いですが、「黒岳」の山頂から見る富士山は宝永火口が真正面に見え、その裾野に広がる広大な大自然が圧倒的で、何かこちらに迫ってくるかのような迫力があります。
山頂で富士の絶景を存分に味わった後は来た道を下山、全員無事に下山できた事を山神様に感謝しつつ車に乗りこみました。
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(魚屋さんが始めたお食事処「魚啓」。新鮮な海鮮料理が食べられる人気店。数年前から使用しているカメラで撮影)

下山後の楽しみと言えば、やっぱり“温泉”と“ご飯”という事で、先ずは“温泉”に浸かり、心地良く疲れた身体を温泉で癒してから、もう一つの楽しみである“ご飯”を堪能する為に「魚啓」という地元のお食事処へと向かいました。
僕達がお食事処「魚啓」に到着したのは夕飯の時間帯と言うにはまだ早い時刻でしたが、お店の中には既に沢山のお客さんがいました。
「魚啓」は魚屋さんが始めた和食処で、毎朝、沼津港から直接仕入れている新鮮な魚介類を使っているので、安価でボリューム満点な料理を食べる事が出来ます。
僕は生魚が若干苦手なので、新鮮な魚介類が20種も入ったおすすめの「海鮮丼」は食べれませんでしたが、代わりに頼んだ「エビチリ定食」も最高に美味しかったです。
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(左は数年前から使用しているカメラ、右は「PowerShot S120」で写したエビチリです。どちらが美味しそうでしょうか)

今回、枻出版社さんの「オトナの趣味サークル」という活動に参加させていただき、最新のデジタルカメラで撮影をしながら「愛鷹連峰」の最高峰「越前岳」に登れるというまたとない機会をいただきましたが、Canonの「PowerShot S120」というカメラはデザインがカッコいいというだけでなく、コンパクトで重量もわずか217gほどしかなく、少しでも荷物を軽くしたい登山にはピッタリだなと思いました。
ここに載せた写真の全てが「PowerShot S120」で撮ったものではありませんが、他にも特筆すべき機能がまだまだ沢山ありますので、詳しくは枻出版社さんの「オトナの趣味サークル」というページをご覧いただければと思います。

2014年1月9日 倉田文裕

La squadra leggendaria 「Rapid Masters (ラピッドマスターズ)」

前回、11月の下旬にニュージーランドで開催されたラフティング世界大会で見事世界2位に輝いた日本唯一のプロ・ラフティングチーム「テイケイ」の事について書きましたが、今回は同大会のマスタークラスで世界3位に入った「Rapid Masters(ラピッドマスターズ)」というラフティングチームについて書きたいと思います。
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(ラフティング世界大会マスタークラス日本代表の「ラピッドマスターズ」。川の偉大な先輩方が偉業を成し遂げました)

「ラピッドマスターズ」は1999年に結成された国内初のラフティング日本代表チームで、同年南アフリカのオレンジ川で開催された世界大会に初出場しました。
その後、2002年に、テイケイグループによる実業団チーム、「テイケイワークス・ラフティング競技部 チーム・テイケイ」が結成されるまでの間、日本を代表するラフティングチームとして世界を舞台に戦ってきました。
「チーム・テイケイ」の結成と同時に「ラピッドマスターズ」の歴史も一度は幕を下ろしましたが、2012年にニュージーランドで開催されたプレ大会で「マスターズ」という新たなカテゴリーが設けられることが決まり、元メンバーに新たに新メンバーを加えた新チームで「ラピッドマスターズ」が再結成されました。
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(2002年当時の「ラピッドマスターズ」。「テイケイ」前監督の浅野重人さんをはじめ錚々たる顔ぶれが並んでいます)

メンバーはキャプテンの本間 靖雄さん、稲田 勇人さん、宮川 祐二さん、有馬 新さん、貝本 宣弘さん、梅本 徹さんの6名で、有馬新さんは10月下旬に急逝された小橋研二さんの遺志を継ぐ形で11月上旬、世界大会直前に急遽チームに加わりました。
メンバーの皆さんは、“伝説的なラフティングガイド”に、“日本を代表するカヤッカー”と、僕のようなラフティングガイドの端くれからすれば、神レベルの凄いメンバーが揃っており、僕にとっては親近感が湧く身近なチームと言うよりは、気安く声をかける事など許されないチームという感じですが、本間靖雄さんと宮川祐二さん、有馬新さんはみなかみ町のアウトドアツアー会社カッパCLUBで大変お世話になっている大先輩ガイドなので、「ラピッドマスターズ」が再結成された時から陰ながら応援させていただいていました。
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(「みなかみX‐TREAM」では「テイケイ」に次ぐ総合2位で見事世界大会マスターズ部門への出場権を獲得しました)

6月の15、16日に群馬県みなかみ町で行われた「みなかみ X‐TREAM」で、ラフティングチーム「テイケイ」に次ぐ好成績を残し、見事世界大会マスターズ部門の出場権を獲得した「ラピッドマスターズ」ですが、ラフティングチーム「テイケイ」とは違い、プロチームではないので、生活の拠点も仕事もバラバラで、メンバー全員で一緒にトレーニングをする機会も限られてしまう為、出場権を獲得するまでの過程、そして世界3位になるまでの過程には様々な苦労があったのではないかと思いますが、それを微塵も感じさせずに、この短期間で結果を残してしまうこのチームとメンバーの皆さんは本当に凄いなと思いました。
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(1位ニュージーランド、2位チェコ共和国に次ぐ総合3位でラフティング世界大会「マスターズ部門」で見事表彰台に)

ニュージーランドで行われた世界大会での結果は大会初日のスプリント3位、最終日のダウンリバー3位と、2種目で表彰台へと上がり、そして総合でも1位ニュージーランド、2位チェコ共和国に次ぐ、世界の3位に入り、海外の屈強な男たちを相手に日本人ラフターのレベルの高さを証明しました。
僕はこの世界3位という結果はもちろんですが、「ラピッドマスターズ」のメンバーの皆さんが表彰台で小橋研二さんの写真を誇らしく掲げている姿に、日本人の絆の強さみたいなものを感じ、非常に感動しました。
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(「やっぱり日本人っていいな」と感じる表彰式での一枚。小橋研二さんの胸元にもしっかりと銅メダルが輝いてます)

今後、「ラピッドマスターズ」の皆さんがどのような活動をしていくのか僕は存じ上げませんが、これからもラフティングの関係者だけでなく、世の中のマスターズ世代のアスリートに勇気を与える活躍を勝手に期待していきたいと思います。
「ラピッドマスターズ」の皆様、本当におめでとうございました。
そして、沢山の勇気と感動をいただきありがとうございました。

2013年12月19日 倉田文裕

La squadra più forte 「ラフティングチーム・テイケイ」

今、日本には様々なジャンルの世界チャンピオンがいますが、僕の身近にも2010年、2011年と世界選手権を連覇した世界チャンピオンがいます。
その世界チャンピオンとは、日本唯一のプロ・ラフティングチーム「テイケイ」です。
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(日本唯一のプロ・ラフティングチーム「テイケイ」。今や日本だけでなく世界のラフティング界をリードするチームです)

ラフティングチーム・テイケイ」は、2002年12月16日に“レースラフティングで世界一になる為”そして“レースラフティングを国内に普及させる為”に結成されました。
僕はアドベンチャーレースを始める為に群馬県のみなかみ町へとやって来た2009年に、カッパCLUBを拠点としてみなかみ町で合宿をしていた当時の「テイケイ」のメンバーの皆さんと初めてお会いしました。
現在もチームで選手兼任監督として活躍されている池田拓也さんをはじめ、この1年後に世界チャンピオンへと上り詰めるメンバーの皆さんは皆オーラをまとっており、言うまでもなく凄い身体をしていました。
ラフティングガイドをしている方の中にも筋骨隆々な凄い身体をしている人は沢山いますが、「テイケイ」の皆さんの身体はただ大きいだけでなく、強くしなやかで、柔らかい筋肉、いわゆる“魅せる筋肉”ではなく、“使える筋肉”という鎧を身にまとっているという印象を受けました。
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(「Warrior Dash ウォーリアーダッシュ」の東京ドイツ村大会に参戦。身体能力の高さを見せつけ上位を独占しました)

2007年に韓国で行われたラフティング世界大会で3位、2009年にボスニアヘルツェゴビナで行われた同大会で2位と、この時既に世界のトップチームへと上り詰めていた「テイケイ」の皆さんですが、全く驕りはなく、とても謙虚で、アスリートとしてだけでなく、人間としても非常に尊敬できる素晴らしい方達だと感じました。
そんな素晴らしい人間が集まった強いチームが愛されない訳がなく、ラフティングに関わる全ての人達が、このチームを愛していて、僕自身も出会ってすぐにこのチームのファンになりました。
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(「チームの調和を生むには、相手を知る事。目標は一つ、やり方はそれぞれ」池田拓也さんのインタビュー記事より)

今の「ラフティングチーム・テイケイ」のメンバーは選手兼任監督の池田 拓也さん、キャプテンの古川 陽進さん、小泉 聡さん、鈴木 翔太さん、泉山 正大さん、藤川 雄大さんの6名で、11月の下旬にニュージーランドで行われたラフティング世界大会では見事世界2位という結果を残しました。
メンバーの鈴木翔太さんと泉山正大さんはカッパCLUBでの僕の先輩ガイドで、数年前まではラフティングガイドとして一緒に利根川で働いていました。
その鈴木翔太さんと泉山正大さんがこのチームに加入した事で、より「テイケイ」というチームが身近な存在になった気がしましたが、僕にとって規格外のラフティングガイドであった鈴木さんと泉山さんが色々な面で苦労しているという話を知人から聞いた時は、やっぱり世界を連覇しているチームでのトレーニングや生活は半端じゃないんだなと思いました。
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(カッパCLUB出身のアスリート鈴木翔太さんと泉山正大さん。リバーガイドとしてもアスリートとしても尊敬してます)

何のスポーツでもそうですが、プロのアスリートとして活動している限り、常に結果が求められます。
プロのアスリートして活動をした事が無い僕には「テイケイ」の皆さんが感じているプレッシャーの大きさというものを計り知る事は出来ませんが、サポートを受けている身という意味では、ある程度その“プレッシャーの質”みたいなものが僕にもわかるので、そのプレッシャーに負けず、力を出し切り、結果を残している「テイケイ」の皆さんの精神的な強さというは本当に凄いなと思います。
先日、「ラフティングチーム・テイケイ」はチームの存続が決まり、再び世界一奪還のために動き始めました。
僕はこのチームとメンバーの皆さんのファンの一人として、これからも応援し続けると同時に、チームの活躍に良い意味で刺激をいただいて頑張りたいと思います。

2013年12月13日 倉田文裕

Potere di uomo 「人間の力」

前回、「自然の力」というタイトルで自然の偉大さや素晴らしさ、更には怖さみたいなものについて書きましたが、今回は「人間の力」というタイトルでスノーカントリートレイルのルート上を調査の為に歩き回っている中で感じた「人間の力」の凄さみたいなものについて書きたいと思います。
前回も書きましたが、調査の為に自然の中を歩いていると改めて自然の大きさと言うか人間の小ささみたいなものを感じる事があります。
人間の文明がどんなに発達しても、その文明を一発で破壊してしまうパワーが自然にはあり、人間は常に自然の中では謙虚でなければならないと思うのですが、それでも、たとえどんなに小さな力でも、沢山の人の力が一つに集結し、更にそこに人の英知が加わると、大自然にも負けずとも劣らない存在感をもった光景を人は生み出す事が出来ると感じます。
今回はそんな大自然の中でも強烈な存在感を放っている「人間の力」によって生まれた光景を幾つか紹介したいと思います。
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(三国川ダム。粘土や岩石を積み上げて造る“ロックフィルダム”。ダムマニアではない僕でもゾクゾクする光景です)

最初の光景は新潟県南魚沼市清水瀬にある光景で、「三国川(さぐりかわ)ダム」という巨大な建築物です。
このダムは粘土や岩石を積み上げて造る、いわゆる“ロックフィルダム”という種類のダムで、堤高は119.5mあります。
僕の住んでいる群馬県みなかみ町にある「奈良俣ダム」も同じ“ロックフィルダム”で、堤高は「三国川ダム」のそれよりも約40mも高い158.0mありますが、「奈良俣ダム」の迫力にも全く引けを取らない迫力が「三国川ダム」にもあると思います。
このダムがある三国川はキレイな水で親しまれ、農業や漁業に大変役立ってきましたが、大きな洪水で大暴れしたり、日照りで水不足になり、人々を困らせた事が何度もあったそうです。
しかし、この「三国川ダム」が出来たおかげで大雨が降っても安心して生活でき、人々の暮らしの中で大切な水や電気を安定して供給できるようになったそうです。
僕はいわゆる“ダムマニア”ではありませんので、こういった歴史はつい最近まで知りませんでしたが、歴史を知れば知るほど“人間の力”の凄さというのがわかるなと思いました。
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(「しゃくなげ湖」の南側にある巨大な法面。大自然という巨大なキャンパスに人間が描いた壮大な絵画は圧巻です)

2つ目の光景は「三国川ダム」のダム湖「しゃくなげ湖」の南側に広がる法面(のりめん)です。
「しゃくなげ湖」は三国川ダムの建設によって河川が堰き止められた結果出来上がった湖ですが、その湖の南側にある法面はある意味「三国川ダム」と同じ位の迫力があります。
この法面はダムに使われている石(ロック材)をこの場所から採集した結果生まれたものらしいのですが、実際にこの法面を目の当たりにすると、「一体どうやってこの急斜面から石を採集し下まで下ろしたの?」と聞きたくなるくらいの斜度と高さがあります。
そこだけ木が生えていない、明らかに人工的なものを感じさせるその光景は自然の中にあっては不自然な光景なのかもしれませんが、かえってそれがこの法面の存在を引き立たせています。
南魚沼市にお越しの際は是非「三国川ダム」と、この「法面」の迫力のある光景をご覧になっていただければと思います。
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(松之山街道の途中、鉄塔を真下から見上げた光景。自然の中でこんな光景が見れるのはクモの巣くらいでしょうか)

最後は新潟県十日町市の古道「松之山街道」を歩いている途中に真上を見上げると見える光景です。
送電線の鉄塔というのは山間の地域ならばどこにでもあるものだと思いますが、その鉄塔を真下から見上げるという行為をした事がある人はあまりいないのではないでしょうか。
1996年に文化庁から「歴史の道百選」に選ばれた古道「松之山街道」ですが、現在散策道として整備されている区間は松代熊越山(くまごえやま)から太平(たいへい)間の770mと菅刈(すがかり)から犬伏(いぬぶせ)間の2,354mですが、今回のこの光景は後述の菅刈-犬伏間の稜線上にあります。
真下から見上げる鉄塔はご覧の通り見事なまでの幾何学模様で、万華鏡を覗き込んだ時のような規則正しい模様をしています。
自然の中ではまずお目にかかれない、ある意味不自然なくらい規則正しい模様が自然の中に存在するので余計に凄いと思うのかもしれません。
そもそもこんな所にこんな巨大な建造物を建てた事、その鉄塔と鉄塔の間に電線を渡す事自体が凄い事なのですが、そこに触れるとキリがないので今回は触れませんが、それも含めて「人間の力」って凄いなと僕は思います。
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 (最後にオマケでちょっとホッとする田舎の風景を一つ。田んぼの中に描かれた人間と自然がコラボした芸術作品)

これから標高の高い所も雪が融けはじめ、少しずつそういった所にも調査に行く機会が増えるかと思いますが、僕の師匠、田中正人さんの言葉、「自然の中では常に謙虚であれ」という言葉を肝に銘じ、どんなに頑張っても「人間の力」<「自然の力」なんだという事を忘れる事なく自然の中にお邪魔して行きたいと思います。

2013年6月24日 倉田文裕

Naturale potere 「自然の力」

今年の8月3日、いよいよスノーカントリートレイルのスルーハイクイベントが始まります。
今、僕はルート上のどこに、どんな道標、もしくはマークが必要なのかを調べる為日々歩き回っています。
ルート上には「巻機山」や「越後駒ヶ岳」、「苗場山」など標高の高い山が結構あり、それらの山にはまだまだ沢山の雪が融けずに残っているので、そういった所にはまだ調査には行けませんが、スノーカントリートレイルは全長280kmもある壮大なルートですので、もう雪の無い標高の低い山や平地の街中、田園地帯みたいな所も沢山あるので、先ずそういった所から調査を進めています。
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(6月5日の新潟県魚沼市の「銀の道」。駒の湯の方から登りましたが、残雪が多く銀山平には降りれませんでした)

調査の為に自然の中を歩いていると改めて自然の大きさと言うか人間の小ささみたいなものを感じる事があります。
人間の文明がどんなに繁栄しても、その文明を一瞬で崩壊させてしまうパワーが自然にはあり、人間は常に自然に逆らう事なく、より自然に近い状態で生きていくべきなんだと言われている気がするのですが、その自然の力によって長い年月をかけて生み出された「奇跡の光景」を目の当たりにすると更にその思いが強くなります。
今回紹介するのは、新潟県津南町の「見倉橋」から見える光景と同県南魚沼市の「五十沢キャンプ場」近くの川岸にある光景、そして群馬県みなかみ町の「赤谷越」にある光景の3つです。
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(見倉橋から見える光景。中津川の川沿いにある大きな岩の上に巨大な流木が絶妙なバランスで乗っかっています)

先ず、新潟県津南町の「見倉橋」から見える光景ですが、橋の途中から中津川の下流の方を見ていただくと多分見えるかと思います。
なぜ「見えます」という表現ではなく「見えると思います」という表現なのかと言いますと、その光景が「岩の上に乗っかった巨大な流木」というものなので、もしかしたら、今はもう川の増水などでその流木が岩の上から消えてるかもしれないからです。
角の取れた丸い岩の上に2m弱の巨大な流木がどうやってあのように上手い事乗っかって、尚且つバランスをとっているのか、不思議で仕方ありませんが、恐らく色々な偶然が重なって生まれた“奇跡の光景”なんだろうなと思います。
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(五十沢キャンプ場の近くにある光景。もはや岩と言う言葉では片付ける事が出来ないくらい半端なくデカい岩です)

次に南魚沼市の「五十沢キャンプ場」近くの川岸にある光景ですが、タイトルを付けるとしたら「半端なくデカい岩」と言ったところでしょうか。
こんな巨岩が“どこから”“どうやって”この場所にやって来たのか、僕には想像すらできませんが、岩の周りが削られて丸くなっている所を見ると、気の遠くなる位の歳月をかけてこの場所まで転がって来たのかもしれないなと勝手な想像をしてみたりもしています。
その威圧感が写真では伝わり難いのが残念ですが、とにかくその大きさに圧倒され、“自然の中での人間の無力さ”みたいなものを実感できる光景だなと僕は思っています。
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(みなかみ町の「仏岩」。スゴイ形をした、スゴイ大きな岩が、スゴイ場所に鎮座していて、特別な存在感があります)

最後に群馬県みなかみ町の「赤谷越」にある光景ですが、この場所には「仏岩」と呼ばれる巨大な岩が存在します。
その岩が山の中腹や裾野に存在するのならば、それほど驚く事も無いと思うのですが、それが「仏岩ポケットパーク」から「吾妻耶山」へと続く登山道のすぐ脇、細い稜線上に存在しているのでとても驚かされます。
「仏岩」という名前の由来ですが、「法衣(ほうえ)をまとった修行僧に似ているから」だそうです。
上の写真の様に岩の真下から上を見上げてみても、「仏岩トンネル」の西側の出口付近にある「仏岩ポケットパーク」から岩を遠目に眺めて見ても、正直、その名前の由来はわかりませんが、とにかくこの岩のある“場所”“形”“大きさ”が普通ではないので、特別な存在感みたいなものを感じられる光景なのだなと思います。
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(人間の小ささと自然の大きさを感じさせる光景。“自然の中で人は常に謙虚であるべき”と肝に銘じたいと思います)

自然の中に居れば居るほど自然の偉大さや素晴らしさみたいなものを感じると同時に自然の怖さみたいなものも感じますが、人はどう頑張っても自然には勝てないという意味では「自然の中で人は常に謙虚でいなければならない」と言われている気がします。
これから雪が融けて標高の高い所に行く機会が増えると思いますが、無理をして自然の機嫌を損なわないよう謙虚に自然の中にお邪魔して行こうと思います。

2013年6月17日 倉田文裕

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